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●『部屋番号なんだっけ?』
●1分後帰ってきたメールには、『111。』
●彼の部屋が111だって、覚えていた。でもわざと忘れたフリをした。あの頃が遠い昔で、覚えてないフリをしたんだ。
●でももう私は振り返らない。
●部屋から出て、自動ドアを通り抜け、外に出て、駅へ向かう。12月とは思えないほどの暖かい朝。
●隣で赤ちゃんが泣いている。私も大声で泣きたいよ! 唇をかみしめて歩く。そうしないと涙が出てくるから。
●むなしい朝が来るのは分かっていた。でも、もしかしてという期待を抱く自分がいたんだもの……。
●私たちが別れたのはちょうど半年前。
●「このまま付き合っててもいいけど、これからもオレはオレでオマエはオマエ。それが辛いんだったらやめよう。」
●こう言われて、私たちは元の先輩と後輩という関係に戻った。
●半年間、次の恋愛をしたくて、がむしゃらに頑張ってみた。でも私は、彼のことがすごく好きだった。…いや、まだ好きなの。だからたまに思い出してしまう、会いたくなってしまう。
●そして、昨日、ひょんなことからメールをしたら、予想以上に会話が弾み、久しぶりに彼の家に遊びに行くことになった。
●もうこの時決めてた、もう一回賭けてみようと。
●久々に会った彼は髪の色が変わり、部活の日焼けが少し残っているくらいで、あとは変わっていなかった。いつものようにしゃべり、笑い、ご飯を食べ、私は半年分の色んな事を話した。そして、当たり前のように一緒のベッドに入った自分に少し驚いた。
●そして、当たり前のように…
●ねえ…聞くよ。
●「もう一回付き合ってって言ったら『バカだなあ、オマエ』って言う?」
●少しずるい質問の仕方をしてみる。
●ずいぶん時間が経った気がした。
●「…言う…」
●「そっか。」
●やっぱり、そうだよね。
●納得したはずなのに涙が出てきた。
●「なんで泣くの?」
●うわ、ずるい言い方で仕返ししてきた。
●「人生ってうまくいかないんだなって。」
●こんな陳腐な返答しかできなかった。ほんとは、
●「まだこんなに好きなのに、なんで?」
●って言いたかったのだけれど。
●悔し涙。
●こんなに彼は近くにいるのに、私の気持ちを知っているのに、どうにもならない、先の見えてしまった今。
●自分自身でも予想外の涙だったから、彼は少し困っていた。
●会わなければ良かったのかなあ。うん、違う。会わないなんて、私には我慢できなかったんだ。
●眠いのに寝られない、当たり前か。あと少しだけでいいから甘えさせて!
●隣で寝息をたてる彼にしがみついてみる。無意識に軽く抱きしめてくれる腕。あったかい体。目をつむる。
●起きたらもう、彼はいなくて部屋に私しかいない、そんな浅い夢を見て起きた。目の前にはまだ寝ている彼。朝8時半。
●あー、1限はもういいや! 彼はもうすでにあきらめたみたいで動じずに寝ている。私が起きて着替えをガサゴゾしていたら、ちょっと起きた。
●水を一気に飲んで部屋に戻る。
●ゆっくり部屋を見渡す。ギター、ベース。20足以上ある靴が飾ってあるラック。インテリア雑誌がぎっしり並べられた本棚。間接照明。ベッド…。もうこの部屋には来ないかもしれないから、しっかり心に残しておこう。
●彼は完璧に腹をくくったらしく、全く起きない。それとも私が帰るのをわざと待っているんだろうか…。何も言わずそっと帰っていくなんて、なんかドラマチックだな。でもやっぱりヤダ。最後に声が聞きたいよ!
●彼の手を引っ張る。
●「ん?帰るの?」
●「お邪魔しました。」
●「おう、色々頑張ってな。」
●「うん、頑張るわ…」
●もっと他に言うことはたくさんあるけれど、言わないでおこう……。
●どうしても手に入れられないものはあるんだ。我慢しなきゃいけないこともあるんだ。だからって無理に忘れようなんて思わない。会った事に後悔はない。結果の見えてしまった片思いだけれど、彼への気持ちは『スキ』のままにしておこう。
●もう、1、2限は自主休講! 今日ぐらいは好きな人のために泣いたっていいじゃん。さ、うちに帰ったら泣くだけ泣いて、シャワーを浴びて、新しい今日を始めるんだ。
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