●彼は、私の元同僚だ。同期で入った私たちは、時には休憩室で、時には飲みながらいろんな話をする、いい仲間だった。教師という仕事柄悩む事も多く、その上初めて生まれた土地を離れて、遠く広島で暮らし始めた私にとっては、話のできる存在は大切だった。恋心に変わるのは時間の問題だった。出会って1か月後には、私の日記には、彼のことが「恋」として記されるようになった。
●恋心に変わった理由はそれだけではない。
●ある飲み会の夜、私は軽く酔っていた。彼も酔っていただろう。車で私を部屋まで送ってくれた彼を、私は引きとめた。もちろん別の部屋で眠るつもりで。けれど、彼に「おいで」と呼ばれて私は応じた。そして体で彼を感じた。
●それは、今までに知り得なかった感覚……。
●彼と私の「体の相性」は最高だったのだ。彼にはその時つきあっている女性がいた。私がいくら体を重ねたところでその女性に取って代わることはできないだろう。
●それでもよかった。その後も私たちは、時々寝た。彼もまた私との「体の相性」を最高と感じていたから。同僚には決して打ち明けられない、私の恋。
●そのうち仕事が生活の全てを圧迫し、私はその恋に溺れる事もなくなった。
●そして私は別の恋をし、仕事に疲れ、広島に疲れ、退職して地元に戻って結婚した。 |