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●「で……。何?
話したいことって?」
●そういってベンチに腰をかけた恭太は私の顔を覗き込んだ。
●「え? あぁ……、んっと……」
●そう言葉を濁しつつ私は恭太に背を向けて、『言いにくいよ〜あ〜消えてしまいたい』と心の中で叫んでいた。
●恭太と知り合って2か月。交際を始めて1か月と6日。出会いは恭太が町で声をかけてきた俗に言うナンパである。恭太20歳。私27歳のはずである。
●「……のはず」、嘘を言う気はなかった。ただ、「何歳?
ん〜、26歳、27歳?」と聞かれたので、つい…、本当につい、「うん」と答えてしまったのである。
●それ以来、27歳の「はず」で交際は続いてきたのだが、良心の呵責と実年齢とのギャップに耐え切れず告白を決心してこの場にいる……。
●「ねぇ何? 話って?」
●私の切羽詰った表情に、恭太も心配そうにしている。
●『あぁ……、もうお終いだな』
●私は別れを覚悟していた。すべてはこの童顔とあの日の「うん」から…。後悔しても遅い。息を整えて私は振り向いた。
●「ごめんね」
●頭を下げて一気に、
●「実は私、27歳じゃないの」
●そう言って恭太を見た。恭太はホッとした顔で、
●「よかった〜、それだけ?
話って?」
●私がうなずくと、
●「深刻な顔してるから、別れ話とかやったら嫌やなって、びっくりしたわ〜」
●恭太はそう言って笑っている。
●「嘘つく気は無かったの……、なりゆきっていうか……」
●話を続ける私に、
●「いくつなん?
本当は?」
●恭太が聞いてきた。
●「……2」
●「え? 聞こえへん」
●「……2」
●「大きい声で言って!
聞こえない」
●「だから……32だってば!」
●公園に私の実年齢がこだました。
●そう、私は32歳。恭太とはひと回りも違うのである。どんなに大切に思っても、どんなに相性がよくても、私たちの年齢差は埋まらない。
●さすがの恭太でも驚いたのか考え込んでいる。
●『やっぱりもう駄目か……』
●半泣きの私。
●「えっと……」
●恭太の声に心臓も止まりそう。
●「平均寿命って女の人が長いやんな?
確か……10歳くらい違ったよね?」
●と言うと、恭太はにっこり笑って、
●「一緒に」と言った。
●「何が?」
●私は半ベソかいて聞き返した。
●「一緒に逝けそうやね。おいて逝くんも、おいて逝かれるのも嫌やから。丁度いい」
●その言葉に、私は不覚にも泣き崩れてしまった……。
●あれから3年。同じ苗字になった私たちの年齢差は永遠に変わらないけど、あの日の言葉が今も私を支えてくれている。FIN
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