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●新しい会社に就職して、数か月、彼とのことはすべて終わった、ようやく心の平静を取り戻せたと思ったころでした。彼から電話がありました。彼の友人が車の購入を考えていて、見積もりがほしい……。
●結局、以前の関係に逆戻りです。
●今度は私が平日休み、彼は外回りで自由が利くという組み合わせで、会う機会が作りやすく、長時間一緒にいることもでき、ごく普通の独身カップルのようにデートを楽しむことができました。といっても平日だけですが。
●クリスマス、誕生日、お正月は、ほんとうに寂しい思いをしました。今考えるとバカみたいですが、部屋でひたすらユーミン、サザンを聴きながら、泣いていました。
●彼は家庭のことを一切口にせず、私も「別れて結婚して!」とは言わず、ただだらだらと会っていたのです。時折、私が、「○○ちゃん結婚するんだって。いいなぁ…」と言うと、彼はなんともいえない顔をしていました。
●これではいけないと思わなかったわけではありません。実際、友人に頼んで男の人を紹介してもらったことも何度かありました。でも、彼以上の人は現れなかったのです。
●社内の男性と遊ぶこともありましたが、恋愛感情とはほど遠く、たまにいいなと思う人は既婚者でした。
●彼と私は、音楽や映画の趣味が一致していました。それに彼は誰よりも博識でした。彼ほど尊敬できる男性はほかにいなかったのです。 |
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●彼との関係が続いている間に、バブルははじけ、車は売れなくなり、私の働くディーラーでもリストラの噂が流れるようになりました。やめさせられるよりは先にやめよう、私はそう考えて辞表を出し、派遣会社に登録しました。
●派遣先で新しい出会いがありました。彼を忘れるチャンスと思った私は、それなりに積極的に接して、カラダの関係ももったのですが、なんとその男性には結婚を約束した女性がいました。しかもつきあい始めて2か月で転勤の辞令を受けて遠方へ。新しい関係はあっという間に消滅。
●自分の男運のなさに落胆した私は、しばらくの間関係を絶っていた彼に連絡をとってしまいました。彼と会えば、どうなるかわかっています。でも、彼の腕の中にいる間は幸せで満たされます。そして、何もかもどうにでもなれ、という気持ちになれます。
●それはそれは、心地よいひとときなのです。
●ある日、友人夫婦とともに、近くの海に釣りに出かけました。海岸近くに見慣れた車が止まってました。まさか、と思って見ていると、なんと乗ってるのは彼と4歳くらいの男の子。
●びっくりしました。彼は、私に気がついてません。よくよく考えると、昔、この近くに奥さんの実家があると聞いたことがありました。
●なんともいえない気持ちになりました。いつも私が会っている彼は、家庭を匂いをさせないスーツ姿。今見ている彼は、ごくごく普通のお父さん。
●私ってなんてことしてるんだろう……、このとき初めて、私は、自分のしていることの愚かさに気がつきました。 |
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●翌日、彼は、私が働いている会社の前まで、迎えに来てくれることになってました。更衣室の窓から覗いてみると彼の車が止まっていました。私は心の中でバイバイと言って、裏口から帰りました。
●帰路、涙でかすんで前が見えなかったのですが、「これでいいんだ」と、心は晴れ晴れしていたのを覚えています。横断歩道を渡ろうとしてた時、前から来た男の人が、「あの…、時間があったらお茶でも飲みませんか?」と言ってきました。私は丁重に断り、「私って、まだまだいけるよね!」と、自信がよみがえってくるのを感じました。
●その時27歳。
●友人のほとんどは結婚してママになっていました。ふたりの妹も既に結婚していました。妹の結納のとき、「これが行き遅れの長女です」と、母が私を、先方のご両親に紹介したことがありました。そのときの私は、心底母に腹を立てましたが、このときは違いました。「行き遅れかもしれないけれど、まだまだいける!」
●なぜか、そう思うことができたのです。ようやく彼から自立することができたのでしょうか。
●私は、29歳で結婚しました。
●ふたりの子供に恵まれ、現在、結婚7年目。主人はほんとうにやさしい人で、それは結婚当初も今も少しも変わりません。10年前の私には想像できなかった幸せを、今の私は感じています。
●深まる秋の空気の中、散りゆく落ち葉を眺めながら、「あー、こんなこともあったなぁ…」と感慨深くなり、書いてみたくなりました。もちろん主人は私の過去を知りません。真面目な人なので、知ったらショックで立ち直れないかもしれません。だから墓場まで持っていくつもりです。
●20代のいちばんいい時期を無駄にしてしまったような気がしますが、主人と出会えた事で相殺されたと思ってます。
●あの人は今41歳。どうか健康で幸せに暮らしてますように……。 |
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