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●「こんにちは、本日は、京王プラザの3752号室でお待ちしています」
●留守電のメッセージを再生し、人影の少ないエレベーターに乗り込む。月に3回は使わせてもらっているけど、シティホテルのデイ・ユーズって不倫の味方だと思う。音をたてずに廊下を歩き、コンコンとノックをし、ドアが開くと、留守電のオトコだ。
●「久しぶりだね」
●軽くクチビルを重ねる挨拶は、割り切った大人の快楽の始まり。
●倒れ込むようにベッドに入ると、最初は優しく次第に激しく、カーテンを閉め切った中で、貪るように相手の体を求め合った。 |
●部屋がしいんと静まりかえるまで、私は一言も発していない。彼が回してきた腕の中で、ただ天井を見ていた。
●「ねえ、今度は外で会わない?」
●男は、私の髪の毛をもてあそびながら、照れくさそうに誘ってきた。
●「ふふふふ、新宿公園で健全なお花見デートする?」
●茶化しながら答えると同時に、コイツとはもう潮時だと思った。 |
●2か月前、「オトナの不倫掲示板」で知り合った。
●37歳で既婚、身長180cmのプロフィールに惹かれ、携帯のメール交換を数回した1か月後、このホテルのティールームで待ち合わせをした。
●会った時、顔も体つきも私の好みで、今度こそは長続きさせたいと思った。
●しかし、結局、どいつも、恋愛とセックスを共存させたがる。若い頃、恋愛を存在させないセックスはとてもラクだった。あの頃みたいに、私はセックスが欲しいだけなのに。
●TVの番組制作会社に勤める私が、社内恋愛で今の夫と結婚したのは5年前のこと。性格が穏やかで、私には特別優しくて、周囲の誰もが、私の幸せな生活を疑わなかった。夫はその後独立して会社を起こし、それがまた上り調子で、私はフリーの放送作家になった。
●順風満帆を絵に描いたような状態で、私は、飲み会で知り合ったひと回り年上の男性に惹かれた。体の関係になるまで、すぐだった。
●半年後、夫は、私の態度から察した。
●「美智子、このメールは誰としているんだ」
●彼とのメールを読まれて泥仕合いになりかけたが、離婚には至らず元のさやにおさまった。あそこまでいって、普通の夫婦に戻れたのは、夫の性格のおかげだったのかもしれない。
●夫はもともと淡白な人だ。心は温かいが、体は冷たい。セックスと普通の生活を同居させることができないのかもしれない。結婚前は情熱的だったが、結婚後、私を抱いたのは初夜だけ。
●結婚前に欲望を満たす楽しさを十分に知っていた私は、マスターベーションだけでは押さえきれない。泥仕合一歩手前までの経験を生かし、今は割り切った相手をネットで探すゲーム感覚のドキドキを楽しみにしている。 |
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●「次は何時会える?」
●コトを終えた後の着替えって間抜けなものだ。ネクタイを絞めながら私にたずねる姿は、なおのこと。
●「ん〜、また2週間後かな? メールします」
●彼に返答する余裕を与えずに、私は部屋を出た。地下にあるティールームでコーヒーを注文し、タバコに火を付けた。
●プワーッと煙を吐き出しながら、2台ある遊び用携帯のひとつを取り出してメールチェックした。
●「今日は会えてうれしかった。今度は桜を見ながらのデート楽しみにしています」
●さっきまで一緒で、もうメール? しみったれてるぅ。はぁ〜、明日はこの携帯を解約して、新しいオトコ探索でネットサーフィンだわ。
●神様、今度会う相手こそは、恋愛を要求してきませんように!
●私は、携帯のメモリーを全消去した。 |
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