FAnet FAnetとはFAnet会員登録お問い合わせサイトマップ
PS Online CanCam Online cyber Oggi Web Domani BITEKI.com Muffin-Net
LoveLaboratoryFAnetOnline Novels
img
vol.14 2004.07.29
醜い男―――26歳・厚子の場合
Novelization/笹倉 紫  Illustration/福田さかえ
FAnetオンラインノベルは、読者から送られた体験談をもとに書き起こした小説です。あなたの投稿をお待ちしております。詳細はこちら
彼氏と会えない時、寂しさがつのって、生身の男に会いたいと思った。「割り切り大人の付き合い掲示板」で選んだ男は、風采の上がらない安サラリーマン。でも、ホテルを出るときには、会ってよかったと思っていた。
道玄坂の安ラブホの鏡に映る、醜い男と交尾する私。
「桃子はこうされると、いい声を出すんだよね」
醜い男は私の股間に顔を埋める瞬間、嬉しそうに言った。彼はクチュクチュと音を立てて私の身体を貪り、私は何度も果てていた。
この醜い男は、普通に出会ったら、私が付き合うような人種ではない。
3か月前、私は、付き合っている彼氏に3泊4日の旅行をドタキャンされ、ポッカリと空いた休日、部屋に引きこもってPCの前で過した。最初はコスメやファッションのホームページを見ていたが、リンクをたどっていくうちに、いつのまにか「割り切り大人の付き合い掲示板」に行き着いた。
今はもう、不倫やSEXフレンドを求めるのが常識になっているのだろうか?と正直驚いたが、それも最初の数分だけで、読み進むうちに、自分だったらどんなふうにするだろう?という妄想が広がっていった。
そのうち、読むよりも書き込みたくなった。最初はメール交換だけ、と心に決めて、「SEXだけを楽しめる男性募集」というタイトルで書き込んだ。翌日には、たくさんのメールが届き、それぞれに返事を出すのが楽しかった。私は、旅行に行けなかった4日間、毎日、このページにアクセスしていた。
付き合っている彼氏は外資系セールスエンジニア。いろんな国を飛び回っていて、連絡をくれるのは週イチがやっと。メールも最初の頃こそ状況を報告し合うために使っていたが、3か月たち、1年が過ぎ、ほとんど交換しなくなっていた。そんな恋愛の倦怠期だったこともあって、刺激的なメールが楽しく、ワクワクしながら返事を書いていたのだ。
いろんなタイプの男がいた。SEXだけで終わらせたい男、真剣に女性と付き合いたい男、同じ性癖(SMとか特殊な趣味)や価値観の女を探す男…。メールの受信数が増えるにしたがって、私はやっぱりいい女だったんだ…なんて錯覚していった。
彼氏が長期の海外出張で、3か月以上会えない時だった。寂しさがつのって、メールではなく生身の男に会いたいと思った。誰が良いだろう?と受信ボックスで品定めしていると、40歳過ぎで妻子持ちの普通のサラリーマン、“風俗に行くのは病気が怖い。でもドキドキした恋愛感覚で割り切った付き合いをしたい”というメッセージに興味をひかれた。決してしゃれたことを書くタイプではなかったが、何となくこの男となら付き合えそうな勘が働いた。そして渋谷で会う約束をした。
道玄坂にある低価格のコーヒーショップで、醜い男、榊原と初めて会った。安っぽい吊るしのスーツにヨレヨレのネクタイ。髪の毛はテッペンが少し薄く、自信なさげな顔つきで貧乏臭い。決して仕事はできるほうではないだろう。
「桃子さんって、想像以上にキレイなんですね。驚きました」
と、開口一番、小さな目を細めて言った。桃子というのは、ネット上のハンドルネーム。私の本名は厚子だ。彼の風貌からして、私のような女と出会えるなんて滅多にないだろうと、心の中で彼を軽蔑した。学生時代からミスコンに出たりキャンペーンガールに選ばれたり、今は大手外資系IT企業の社長秘書。そんな私が、あんたみたいな男を相手しているのよ、と。
「でも、彼氏とはSEXが上手くいかないんです…」
と、カワイイ女ぶって言った。
コーヒーショップを出て、道玄坂のラブホテルに向かった。ホテルに入る前までは、こんな男と並んで歩くなんて…と後悔していた私が、ホテルを出る頃には、会ってよかったと思うようになっていた。
予想に反して、醜い男とのSEXはとても気持ちがよかった。私はマスターベーション以外で、初めてイクことを知った。彼氏とのSEXは淡白というか、勝手というのか、彼が果てたらハイ、終了。お互いの股間を愛撫しあったり、お互いの唾液が混ざり合って体中にまとわりつくような、ドロドロした溶けるような行為はなかった。いつも何か物足りない、カッコばかり取りつくろった、そんなキレイごとのSEXだった。
でも、それがわかったのは、醜い男と付き合い出してからだ。
私は高校を卒業して上京し、目を大きな二重に整形した。
もともとの私の目は、細い線を描いたような一重。母が近所でも有名な美人で、父にも似なかった私は、「厚子ちゃんは誰に似たんだろうね〜」と言われながら育ってきたから、鏡を見るのが大嫌いだった。物心ついてから高校を卒業するまで、私は暗い、可愛げのない子だった。
整形をしてから、私は明るくなった。周囲が私を見る目が変わったからだ。それまでの暗黒時代の埋め合わせをするように、楽しく過ごした。外国語の専門学校に通ったため、スチュワーデス志望の友人が多く、バイトも女を競うような華やかな業種を選んだ。就職も、成績より見た目で内定を取ることができた。
スチュワーデスになった親友は、いつも、「女は見た目が大事! 若いうちはキレイで愛嬌があれば、どこでも渡っていけるのよ!」と言っていたが、それが言えるのは、もともとが美人だから。顔は変えられても心は変えられない。整形美人の私には、彼女のような天然自然な自信を持つことはできなかった。
今の彼氏は、初めて真剣に付き合いたいと思った相手だった。だからこそ、私の本当の姿を知られたくない、整形前の顔を見せたくない、と思う気持ちがどんどん強くなってしまったのだと思う。必要以上に彼に気を遣って、取りつくろい、ワガママを言わず、彼の言うがままの付き合いを続けてきた。SEXが味気ないのも、当然かもしれない。
「こんなにいい女なのに、どうして彼氏とSEXが上手くいかないんだろうね〜」
醜い男は、ベッドで横たわる私の体を優しく手で擦りながら言った。
「ふふふ、どうしてなんだろうね。でも、榊原さんが解消してくれるから大丈夫よ」
醜い男の胸に顔を埋めながら答えると、私の股間が、彼の突き出たお腹に当たる。鏡には、醜い男と繋がって、いやらしい声を出している私が映っている。本当の私は醜いし、少しもキレイなんかじゃない。それでも今、こんなに気持ちいいし充足してる。
今、ここに映っている私こそ、一番素直な本当の自分…、そう思うことが、いつしか苦痛ではなくなっていた。
Fin
みなさんの恋愛体験談を募集しています!詳細はこちら
ラブラボTOPページへ
小学館雑誌定期購読和楽庵女性セブンブックギャラリー私さがしの占星学Privacy pollicy
このサーバー上のデータの著作権はすべて小学館が保有します。 掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複製・転載・放送等は禁じます。