壁のいたるところにレーザーで映し出された今回の“トリプル エックス”のロゴ。
会場入り口はまるで空港のセキュリティチェック。最近、この類のイベントやクラブでは顔付きのIDがないと入場できないんだ。これも1つの演出というか、流行りなんだよ。
この連載のちょっと前の記事で、“モノ”を売った昔と違って、コラボレーションしたり、昔のものを復活したりカバーしたり、今は空気感やイメージで、“コト”という定義を売る時代なんだよって話をしたんだが、今回、行ってきた「ディーゼル」のイベントも、まさに“こと”を優先させたものだった。
30周年を迎えた「ディーゼル」が、“ディーゼル トリプル エックス メガフェスティバル”を幕張メッセで行うって事だったんだが、いやぁ、車で1時間はかかる。遠いのなんのって、行こうと決めるまで、かなり躊躇しちゃったよ。
でもなんと、日本を皮切りにアジア、中東、ヨーロッパ、アメリカと、世界17か国で、時差に従い、同日同時にスタートしていくんだ。しかも、夕方6時から翌朝の6時まで、12時間ぶっ通しで行われ、集客は1万人と文字通りメガ級だもんな。滅多に見られないグローバルな音楽イベントを見逃す手はないと、行ってきたんだ。
その前にと、木場の“アゲハ”にも、ちょっと寄り道。今の時代を象徴する人気の巨大クラブ。音響と照明がすごいんだよ。若者の文化を見るなら、郷に入っては郷に従えってね。
ちょっと油断すると「ドンさ〜ん♥」って、大勢の子が声をかけて集まってくる。そこは気持ちよく応えてあげるのが僕のやさしいところ。
いつも西麻布の行きつけのBARで会う、モデルの飲み友達。全員トレンドのグレーでまとまって、いい感じ。しかし、お前らも好きだな……。こんな遠方まで(笑)。
う〜ん、でも、驚いたのは、アゲハにしてもディーゼルのメガフェスティバルにしても、どちらも、時代の先を行ってるんだと自負する若者が集まってるはずなのに、格好も踊りも同じだったこと。今の子達って、システムの中に身を置くことに慣れちゃってるんだなって思ったね。僕らの時代は人と違う生き方をしたい、人と一緒はイヤだ、人と同じ格好はしたくない、と個性派が主役だったんだけど、今は、人と違う事をしないから、どうもイマイチ。格好よくない。迫力不足なんだって。
それに、会場に入る時のセキュリティチェックでも、整然と並んで、大人しく待ってるんだよ。「ふざけんな。バカヤロー」って、ブツブツ文句言ってるのは僕ぐらい。今の子と僕らの時代との価値観の違いに、ほんと驚いたよ。
この大勢の歓声に応えてるステージには、ミュージシャンでも何でもなく、CDを操る男が一人……。いくらDJブームでもさぁ〜。変だろ、この光景。音楽シーンも様変わりしたもんだよ。
3つの会場の1つにあるメッシュのドームと照明の演出で観客は大満足。今の若者はカンタンでいいなぁ〜と思っちゃったよ。
で、幕張メッセの大きな会場は3つのクラブに分けられ、総勢23のアーティストが参加するライブとDJで、朝までずっとド迫力。ちょっとお祭り気分で久しぶりに楽しかったんだが、帰ったのは当然、朝。いくら夜なべが得意な僕でも、50代後半ともなると正直かなり、しんどかった。いや、でも貴重な体験だったね。時代は刻々と移り変わってると実感できた催しだった。
でもね。最初に“もの”から“こと”へ変わってきたと言ったんだが、30周年と言えば普通、30年の歩みをディスプレーで見せたり、ジーンズを展示したりするんだろうが、そんなものは一切なし。実物がなくても「ディーゼル最高!」って若者の心をつかんでるんだもんな。すごいよ。
まさに“こと”を優先させたプロデュースなんだろうが、物を見ないで何を根拠に「最高」と言っているのか。若者の消費者心理を無暗に揺さぶるような仕掛けを見ていると、ある種、宗教やネズミ講を見ているようで、ちょっと空恐ろしくなったのも事実。
う〜ん、“もの”から“こと”の販売促進を、身を持って感じたイベントだった。
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