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空とシュウ
SEXFRIEND SINCE 16
LiLy

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コチラから → fanet@shogakukan.co.jp


前回までのあらすじ

 シュウと出会い、セックスに溺れていったのあ。十分な受験勉強をすることなく進学した高校はかつて自分を裏切った優花のいる学校だった。それでも、それなりに学校生活は始まり友達もできたが…

第4章 age17 メリークリスマス(2)― ありきたりな高校生活を過ごしていくのあの心は… ―

 空のブルーに映えていたピンク色の桜が散り、木々が白い雲の下に黄緑色の葉を伸ばし始めたころには、私もルーズソックスをはく、ワカたちの一員になっていた。授業と授業の間の10分休みに一緒にトイレで化粧直しをしたり、2:2に分かれて順番に授業をさぼったり、昼ごはんを食べたり、こうして放課後、渋谷のセンター街マックにたまったりして、私は高校生活をやり過ごしている。
 シュウとの連絡が、少しずつ、途絶えがちになっていた。高校に入ってシュウは、彼女ができたんじゃないかって、私は思っている。聞けないけど、だからなんとなくだけど、でもきっとそうだってことが、分かってしまうのはどうしてだろう。

 「でさぁ、カレシが1日空くだけでチョーたまってるとかゆーから、昨日もまた、カレシの車でやっちゃったんだけど! しかもかなりゴーインでさー!」
 アサミがフレンチフライを口に運ぶ手を休めて、指の油を紙ナプキンにベットリとぬぐいながら、いつものカレシ話を始めた。「ダイエット中だから」ってハンバーガーを食べなくても、そんなにフライを食べちゃ意味ないのにな、とマッピンクのグロス上にさらに油をつけて、テッカテカに光っているアサミの唇をぼんやりと見ながら、私は思っていた。
「アサミんとこも、Sだもんねー! うちのダンナもSだけど、でもさー、Sの男よくない?」
 エイコがカレシのことダンナって呼ぶの、きっと絆が深いっていうアピールなんだろうな、と、鏡を手にブルーのアイシャドーを重ね塗るエイコの指先を見ながら、私は思っていた。でも、別れちゃったあとでは"元ダンナ"とは呼ばないのね。それってなんか、都合いいよね。
「のあのセフレは? S? M?」
 ワカにそう聞かれて、私はドキッとした。シュウのこと、だ。セックスはしているけど付き合っているわけではない男がいる、と話したときから、ワカたちはシュウを私のセフレと呼ぶ。そういう呼び名がついて初めて、私はシュウとの関係がフツウではないのだと思った。“フツウ”のカレシやダンナ、と呼ばれる男なら、電話やメールを無視したりはしないのだろうか。シュウとの連絡が途絶えつつあるのはやっぱり、私はシュウのセフレでしかないからなのかもしれない。
「ん、どうだろう、分かんない」
 私がその話題を流すようにそう答えると、「分かんないわけねぇべ、何回セックスしたんよ?」と、口の中でフライを噛みながらアサミが言い、「のあSっぽいから、案外Mだったり?」と真っ青な瞼をしたマイコが聞き、ワカがアイプチされた目で一瞬、私を睨んだ。
「のあって、何にもうちらに話してくれないよね」
「……」
 私たち4人が囲む、残り数本のフレンチフライ、チーズハンバーガーの黄色い包み紙や、グシャグシャに丸まった紙ナプキン、ばら撒かれた化粧品や鏡が置かれた四角いテーブルの上に、一瞬気まずい空気が流れた。

 「あ、そうだ! アタシ相談しようと思ってたことあんだけど!」
 私に気を使ってなのか、または自分はグループのみんなに何でも話すよ、というアピールなのか、アサミが昨日車でヤッたばかりのカレシについてまた、話し始めた。
「実はさ、カレシ、浮気してるっぽいんだよね」
 「マジでー?」というワカたちの叫び声の中で、私は、ほらね、と、ひそかに思う。カレシとかダンナとか、どんなにもっともらしい名前がついた関係だって、結局は同じじゃない。どうせ終わるのなら、守れない約束をする意味なんて、あるの? 約束をしてしまえば最後、カレシとかダンナとか、そういう言葉の安心感に惑わされて、依存し、期待し、すべてを独占したくなってしまう。約束があるから初めて、裏切りがあるんじゃない。瀬川にされたような裏切りに、再び耐える強さなんて、私は持っていない。1度目はなんとか生き抜いたけど、2度目があれば、それは私を殺しかねない。
「のあはいいな。ヤッてんのに好きにならないって、男みてぇじゃん」
 マイコがテーブルの上に左頬をつけてうなだれながら、ボソッと言った。そして、嫌味でも何でもなく、純粋にそう思う、といった口調で、マイコは続けた。
「好きにならなきゃ苦しくないし。マジ、うらやましい」
 右手で左胸を抑えているマイコに、私は、「それはちょっと違う」と言おうとして、やめた。違う、とは思うけど、どう違うのかは自分でもよく分からないから、言葉で上手く説明できない。ワカたちといると、それが多い。喋ろうしてもすぐ、私は言いかけた言葉を飲み込んでしまう。変に喋って噂になっても面倒臭いし。シュウのことも、話さなければよかったとさえ、思っている。ただ、たまに私は吐きそうになる。飲み込んだ言葉たちが心の中に蓄積されて、たまにオエッて全部、吐き出したくなる。

 「って、のあ、シカトかよ?」とワカに言われ、私はしかたなく「ん、好きにはならないかな」と答えた。「マジ男じゃん!」とマイコが言い、みんなが笑い、それで私はホッとする。

 ここの窓からは、空が見えない。見えるのは、センター街だけ。「好きにならなきゃ苦しくないし」。マイコの言葉が頭の中で反復される。約1か月、シュウからの連絡がこないだけでこんなに苦しい私のこの胸は、シュウを好いているのだろうか。

<続く>

六本木、金曜日、雨の深夜。ウェイトレス、キャバクラ嬢、ラジオDJ、OL、ダンサー、ネイリスト。同じ日、同じ街で6人の女は、夢に、恋に、仕事につまずいていく。それぞれの女性たちが抱く、他人に見せたくない苦しみを描いた連作短編集。


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