Regular Contents
FAnet TOP連載コンテンツ一覧CLOSE
FAnet ONLINE NOVELS
空とシュウ
SEXFRIEND SINCE 16
LiLy

LiLy待望の新刊が発売!

『パープルレイン』 >>詳しくはコチラでCHECK!

¥1,260(小学館)

毎週5名さまにFAnetオリジナル図書カードをプレゼント★

『空とシュウ』への感想やご意見、作者LiLyへのメッセージを募集しています。件名に、【空とシュウ】と明記して、お送りください。
コチラから → fanet@shogakukan.co.jp


前回までのあらすじ

 本心を飲み込んで、周囲の期待通り「不良」でいることしか、できなかったのあ。それを誰にも説明すらできなかった。言い争いの末に、母の口からでたのは「こんなんなら、生まなきゃ良かった」という衝撃的な一言で…

第5章 age18 響き(4)― この苦しみ、悲しみを忘れさせてくれるのは… ―

 その言葉は、すでにえぐれていた私の心にトドメを刺し、死ぬ前の最後の力を振り絞るような気持ちで思いきり叫んだ。

「だったらそのナイフで私の心臓刺して、私を殺せばいいじゃない!!」

 おびえたような目を、一瞬私に向けてから、母はリンゴとナイフの置かれたテーブルの前で膝を抱えて、膝に顔を埋めて、とてもとても小さくなって大声で泣いた。それは、私が今まで見たなかで、いちばん傷ついている人間の姿で、それは、私を今までのどんなことよりいちばん傷つけた。いたたまれなくなった私は、リビングを飛びでて階段を駆けあがり、自分の部屋のドアを勢いよくバタンと閉めた。身投げするようにベッドに飛び込むと、布団を噛んで声を殺しながら、発狂した。階段ですれ違ったとき、私は父の視線を感じることができなかった。
 すべてを失った、と思った。頭が痛くて、真っ二つに割れてしまいそうで、本当にこのまま私、死んでしまうかもしれない。

 重たいまぶたをそっと開くと、白いレースのカーテンから、眩しいくらいに明るい光が部屋に差し込んでいる。まだ、お昼だ。きっとカーテンの向こうには、秋晴れの綺麗な、ライトブルーの空。

 会いたい…。
 会わなきゃ、
 今度こそ本当に
 死んでしまう。

 ベッドから頭をあげると、コメカミがズキズキと痛む。私はベッドのサイドテーブルに手を伸ばし、携帯をつかんだ。
「…久しぶり。何してるの?」
「そっか、これから会えない?」
「うん、大丈夫、私今日お金出すから」
「分かった、2時半に。じゃあね」

 私はゆっくりと立ち上がり、シャワーを浴びるために、階段を降りた。

「今日、のあ、なんか雰囲気違うね」
 ホテルのベッドに腰掛けた私の前にしゃがんだシュウが、私の顔を見上げて言った。
「…あ、うん、目、腫れてるよね」
 あぁ、泣き腫らした顔を上手くメイクで隠しきれなかった時点で、今日会うのはキャンセルすればよかった。私は後悔しながら、シュウの視線から逃げるようにして横を向いた。
「のあ、泣いた?」
「…ん、ちょっとだけね」
 嘘をついた私に、なんで泣いたのかと聞く代わりに、シュウは首筋にそっと、キスをした。
「泣いてるのあって、すげぇ、セクシーだろうね」
「…バカ」
 バカ。シュウの背中に私は両腕をまわす。2か月ぶりの、シュウの体。シュウの匂い。シュウのキス。動かすとまだ、ズキリと重く痛む私の頭を、シュウが優しく右手で支え、そしてゆっくり、私の体を押し倒す。バカになった涙腺から流れでた涙を隠すことも忘れて、私はシュウに夢中になる。シュウの手に洋服を脱がされた私の裸の背中にヒンヤリと、ホテルのシーツが心地よく当たる。シュウの舌を舌で感じながら、私はシュウの服のなかに両手を入れて、手の平いっぱいに感じるシュウの裸の背中の暖かさにまた、バカな私は涙を流す。シュウの舌が入ったままの口を開いて、止まらなくなった涙をぬぐうことも忘れて、私はシュウを見つめて、シュウに伝える。

「シュウ、早く」
「早く、抱いて」

 私は、不良でも、悪い女でもなければ、セクシーでもないし、真面目でも、いい子でも、何でもなくて、私はただ、私なだけで…。自分で自分を見失ってしまいそうだけど、でも、今こうしてシュウに抱かれている私の体のなかに、私の心も、想いも、感情も、全てが詰まっていて、シュウがそのなかに、シュウのすべてが詰まっている体を、ほんの短い時間でも、入れてくれることで私はなんだか、救われる。

 「あぁ、シュウ…」

 シュウの体を体のなかに感じる瞬間、私はなにかを実感する。18、という数字の響きが、16とも17とも、違う理由と似たようななにか…。シュウが私の体の奥に響くとき、私はそれを、思い出す。

<続く>

六本木、金曜日、雨の深夜。ウェイトレス、キャバクラ嬢、ラジオDJ、OL、ダンサー、ネイリスト。同じ日、同じ街で6人の女は、夢に、恋に、仕事につまずいていく。それぞれの女性たちが抱く、他人に見せたくない苦しみを描いた連作短編集。


PAGETOP