第6章 age20 写真(5)― 舞の死、彼女がくれた手紙を思い出した… ―
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親友のあへ
のあ、卒業おめでとー! あたしにもおめでとー! もう二度とこのクソ学校に来なくていいと思うと、せいせいするね! 両手あげてバンザーイって叫びたい気分! って、バンザイって死語だね。わり。
でもさ、本当はあたしすげぇ寂しいの。学校なんて大嫌いだったし、野村とか富士野とか死ねって感じだけど、のあのことだけはあたし、自分で認めるの恥ずかしいくらい大好きだったからさ。のあには悪いけど、あたし、のあが留年してうちの学年にくるって聞いたとき、すげぇ嬉しくてさ。同じクラスになりますよーにって、春休みのあいだずっと念じてたんだ(笑)。だって、のあはあたしの憧れの先輩だったんだもん。でさー、本当に同じクラスになれて、今じゃ“のあ”って呼び捨てじゃん? それってあたしにとっては凄いことなんだよ。“中山先輩”とこんなふうに親友になれるなんて、マジ夢みたいなの!
だってさ、のあは、あたしが持ってないもん持ってるから。それが何かってゆーと、周りの目とか気にしない強さ。あと、大人っぽさ。のあ、いつか女って大嫌いって言ってたじゃん? そのときはあたしも女だから、なんか振られたみたいでショックだったんだけど、言ってる意味は凄いわかんの。女子って陰険じゃん。グループからはずれたらもう学校んなかじゃ生きてけないし、でもグループのなかでも悪口とかいじめとか、めんどくせぇことだらけじゃん? そのどっちかしかないんだから、はっきりいって最悪だよ。でも、のあはさ、グループとか悪口とか、中学生女子の生きがいみたいなアホなことには全部興味なしって感じじゃん? 自分の世界もってるっつうかさ、別に一人でも平気って態度で生きてる。でさ、ダブっても、堂々と登校してくんじゃん? すげぇカッコイイなって。しびれたよ、あたし、できないから、すげぇ憧れるんだよ、のあのそういうとこ。
大好きだから、のあと毎日会えなくなるのすげぇ寂しいな。世の中、マジで腐ってるよね。高校生になったら少しはマシになんのかな? どーなんだろーね。でも、早く大人になりたいな。ガキだからこんなにツラいのかもって、よく思うんだ。だってさ、のあだって、大人だったら好きな男とHしたくらいであんなに酷い目に合わされてないわけじゃん? あたしだって、もっと大人だったら奴に振られてなかったと思うんだ。あたし、奴のことかなりマジで好きだったんだよ。今でもだよ。愛してるの。まー、だから、奴を追っかけて同じ高校行くわけなんだけどさ(笑)。でも、しつこくしすぎて、あたし奴に嫌われてるかんねー。会うのこわいなー。でも会うのすげぇ楽しみー。自分でもわけわかんねー。
とにかく、のあ、愛してる!!! ずっとずっと親友でいて下さい!!! 高校はバラバラになっちゃうけどさ、放課後あそぼー! 渋谷でオケッてプリクラとろー!! って、のあ、両方嫌いなんだよね。変なのー! でもそーゆーとこも好きー!
のあの親友舞より
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静まり返った暗闇の中に、しゃくり上げる自分の声がとても悲しく響いていた。薄くあけた目の先には、次から次ぎへとわいてくる大量の涙越しに、ただただ真っ黒な闇がぼんやりと広がっている。舞とは卒業以来、2、3度電話で話したくらいで、一度も会っていない。最後に交わした会話も思い出せないくらい、私たちはすぐに疎遠になってしまった。舞からの連絡もなかったし、そういうものだと思っていた。だけど、中学と同じように苦しかった高校生活の中で、救いを求めるようにして、あんなに何度も何度も机の引きだしの中から舞からの手紙を引っぱりだして読んでいたのなら、例え一言だけでも、返事を書けばよかったのに。「舞ありがとう」って、心の中では何度も何度も、思っていたのに…。
高校に入って、舞は“奴“とはどうなったんだろう。舞の世界は少しはマシになったのかな。ならなかったから、死んじゃったのかな。舞は本当に、死んじゃったのかな。
うつ伏せになって、枕に顔を沈めると、耳の中に溜まった涙が流れでた。私は枕の中の綿を思い切り歯でかみ締めながら、とめどなく流れ続ける涙を枕カバーに染みこませた。右手をシーツと足のあいだに滑らせて、パジャマの中へと潜らせる。曇った悶え声を、かみ締めた綿の中に埋めこむようにして、私は自分を慰めた。
指を動かしながら、思い浮かぶのは、シュウ。
長い髪をあたまのてっぺんで乱暴につかまれながら、私はシュウに後ろから犯されている。私が両手をついている大きな鏡に映っているのは、裸の自分。私は舌をだして、冷たい鏡を舐めている。口を大きく開けて、鏡に映る、可愛い自分にキスしている。自己愛という、私の犯した重罪を罰してくれているシュウに、傷口から血がにじむような悲痛さをもって、私は濡れてゆく。
痛い。
痛いよシュウ。
だからお願い、
連れていって。
そこが果てなら、
一瞬でもいい、
そこにいかせて。
頭が痛いの。
目も、耳も、
凄く痛いの。
心が破れそうに
激しく痛むの。
痛み止めを、
私に与えて。
あ、
純也。
慌てて鏡から舌を離すと、私の髪をオレンジ色に染めている純也が鏡に映っていた。ハッと我に返った私が両手パンティの中から抜きだすと、枕とシーツのあいだに滑らせ、枕に深く埋めた自分の顔ごときつく、抱きしめた。雲にしがみつこうと必死になって両手を伸ばす、今にも下界に堕ちちゃいそうな天使みたいに、私はあたたかく濡れた指で何かを探していた。
つかまるところなんて、ほんとはどこにもないのに…。
<続く>


