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空とシュウ
SEXFRIEND SINCE 16
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前回までのあらすじ

 カメラマン・美咲のアシスタントとして働くのあ。のあに対する美咲の態度は、もうひとりのアシスタント・里中へのものとあきらかに違う。ある撮影の帰り道、里中から聞いた、“美咲がのあを採用した理由”とは…

第7章 age21 記憶の中の空(4)― あの日の空の写真“美咲がのあを採用した理由”とは… ―

「アハハ! それ、三咲さん、すごい気に入ってたよ」

 なぜか笑いながらそう言う里中に、私はどう対応していいかわからずに、戸惑いながらも、こみ上げてくる喜びに顔を歪めずにはいられなかった。
「…本当ですか?」
 私はわざと冷静な声で言いながら、書類を後ろの座席に置いて助手席に腰をおろした。

 車のエンジンをかけながら、里中はまだ笑っている。
「だって、使い捨てカメラで撮った、しかも5年も前の日付け入りの写真送ってきたのなんて、中山さんだけだったからさー」
「…え、」
 ハンドルに手をかけたまま体を後ろにねじって車をバックさせながら、里中は続けた。
「中にはさ、三咲さんでも使わないよう高性能のカメラ使った写真とかもあったくらいで、みんなすげぇ凝ったの送ってきてさ。でも三咲さん、そういう気合い入った人、求めてなかったから」
 里中は前に向き直ると、ギアをシフトして車をまっすぐ走らせた。私は、フロントガラス越しに流れてゆく駐車場の灰色のコンクリートの壁を見つめていた。

 そうなんだ。写真の才能が認められた気になっちゃっていたんだけど、その逆の理由で私、採用されたのか。そうだよね。そうだよ、才能なんてあるわけないじゃない。だけど、そう思ってみても、どうしよもなく悔しくて、写真を持つ指に自然と力が入る。

「きっと俺で懲りたんだろうね、情熱的カメラマン志望の若造は。やっと仕事覚えてアシスタントとして使えるようになってきたと思ったら、三咲さんの現場で人脈作ろうと必死になるわ、早く独立させろって言いだすわで、使えねーって思ったんじゃないの? きっと、黙々と言われたことやってくれる子が欲しかったんでしょ。だから、雑誌で公募したんだと思うよ。知り合いの知り合いとかだと、やっぱ建前上、数年後には独立させなきゃいけないし。あの人、何気に執念深いからね。普通2、3年で独立なんだよ。俺なんてもう4年目だぜ、あり得ない」

 駐車場を抜けた途端、目に入ってきた、ピンクがかった強い光に目を細めながら、私は思わず言ってしまった。

「三咲さん、里中さんのことが好きなんじゃないですか?」

 アハハ、と笑いながら里中は、ネックレスにかけていたサングラスを取ってかけた。
「違う違う。それに俺がこんなに長くアシスタントやってるのは、入ってくる新しい子がすぐ辞めちゃうってのもあるのよ。三咲さん、根は優しい人なんだけど、人に対して不器用なとこあるから。仕事にはめちゃめちゃ厳しいし。でもまぁ、だからこそあそこまで登り詰めたんだと思うよ。だからさ、中山さんは辞めないでね」
 無神経で自分勝手な里中に、送った写真が一番しょぼかったという理由で私を採用した三咲に、私は猛烈に腹がたってきた。
「辞めないなんて約束できません。それに私、三咲さんに言っていない秘密があるから。それがばれれば私、即効クビですし。だから半年後には里中さん、独立できないかもしれないですね」

 突然感情的になった私に驚いた様子で、里中は私のほうを見た。
「何、秘密って」
「危ないから前向いて運転してください」
 そう言って里中を避けるように横を向き、窓ガラス越しにサイドミラーに移る自分の顔を見た。

「秘密って何?」

 しつこく聞いてくる里中に、私はもう、クビになってもいい、という思いで口を開いた。

<続く>

六本木、金曜日、雨の深夜。ウェイトレス、キャバクラ嬢、ラジオDJ、OL、ダンサー、ネイリスト。同じ日、同じ街で6人の女は、夢に、恋に、仕事につまずいていく。それぞれの女性たちが抱く、他人に見せたくない苦しみを描いた連作短編集。


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